2012年 子どもたちとの出会いが始まりでした。40歳を目前に教員へ転身した私の3校目の配属先は横浜市大病院付属の院内学級でした。私は院内学級担任として、長期入院を余儀なくされる子どもたちと共に時を重ね、様々な事情で治療に専念する子どもたちの姿を目の当たりにしました。「教育とは何ぞや」と必然的に自問自答を繰り返す中で、根底から学校教育の真意とその存在意義を深く考えさせられる変革期でした。目に見えぬ、言葉にできぬ不易を感じる日々、学校教育の「指導や評価」という固定概念、戦後から信じて疑わない神話的教育理念が子どもの生きる力と感性の萎縮を生み出していると気づかされました。
そこで、指導や評価の一切を払拭する空間づくりとして「ものづくり創造空間」を実践。クラス一面に広げられた多種多様な画材を一人ひとりが自由に選び、その時の感情や想いで自由に制作・表現するという時間に、手本や教科書は存在せず、それは、ひとり一人の個としての尊厳が認められた瞬間でした。指導や評価から解き放たれた子どもたちは、目を輝かせ生気を取り戻すように夢中で制作する中で、不思議なほど心と体を治癒していきました。その時私は「現代社会に必要で無いもの」を静かに確信しました。
それを機に、2014年に横浜で初の指導や評価のない心の治癒を目的に制作するアトリエ活動を開始。個の尊厳と感性を尊重し、指導や評価で染めることなく生み出されるナチュラルアートを第一義とし「アトリエセンティーレ」と命名。2016年に、ものづくりや制作が心身を治癒し、ひとり一人の生きる力や源になってほしいと願い「あーとすたじお源」へ改称しました。当初から変わらずインクルーシブに障がい者・健常者を問わず、多様性を認め合う開かれたアトリエ(アートスタジオ)として、活動して参りました。
設立当初は心の治癒を目的に活動していましたが、メンバーや保護者の願いもあって、生み出された作品を社会へ発信することになり、障がいがあっても社会へ参加できること、社会的認知という存在証明、また、社会的自立への可能性を追求すべく、作品の企画展示を市内・都内で展開することに。障害の有無に関わらず「アートとして純粋かつ厳正な真価を問う」をコンセプトに、作品のクオリティを尊重した企画展示はマスコミ等にも注目され、あーとすたじお源と所属作家、作品が少しずつ社会へ知れ渡るようになりました。その過程で他機関から様々なオファーをいただき今日に至ります。
2021年6月多くの賛同者のお力を得て特定非営利活動法人あーとすたじお源を設立。今後は、これまでのアート活動や企画の事業化、また、地域のコミュニティを生かした「あったらいいな」の視点から地域還元型のネットワーク活動を展開したいと考えます。アートワークと地域活動の2本柱を構築し、ソーシャルインクルージョンの視点から幅広く多様性をもった「人と人をつなぐ」役割を担い、実践から地域と社会へ確かな実りを還元して参りたいと思います。よろしくお願い致します。
理事/ファウンダー
福家健彦